国債を発行するときに誰からお金を拝借しているのか?2024年01月21日 16:55

前回、「政府は通貨発行権があるから、国債を発行して支出できる」とさらっと書きましたが、少し解説が必要かもしれません。

国債について「国の借金」「将来世代の負担」と思っている人がまだまだ多いと思いますが、事実はそうではありません。
政府が国債を発行する際には、誰かのお金を拝借しているわけではありません。
例えば個人間でお金を貸し借りする場合について考えてみます。わかりやすくAさんがBさんから1万円借りるとします。この場合は、Bさんが持っている1万円がAさんに移ります。Aさんが1万円借りると、Bさんの持っているお金が1万円減ります。AさんとBさんの持っているお金の合計は変わりません。
ところが、政府が国債を発行するときはこれとは事情が異なります。政府が国債を発行すると、国債の主な買い手は市中銀行(三菱UFJ銀行や三井住友銀行など)です。1億円の国債を市中銀行が購入するときには、市中銀行の持っている日銀当座預金の残高を1億円減らして決済します。このとき政府の持っている日銀当座預金が1億円増加します。この時点では市中銀行と政府の日銀当座預金の残高は変わりません。しかし、この後、政府が日銀当座預金を元手に民間企業に支出をする(例えば、建設会社に1億円払って道路を作ってもらう)と、建設会社が市中銀行に持っている銀行預金が1億円増えます。と同時に、市中銀行の日銀当座預金は1億円増えます。
これらの取引をまとめると、以下のようになります。

政府:貸方に負債として国債が1億円
市中銀行:借方に国債が1億円、貸方に負債として預金1億円
建設会社:借方に銀行預金1億円

国債発行により、民間企業(建設会社)の銀行預金が1億円増えます。でもそれ以外に誰のお金も減っていません!
国債を発行して政府が支出するプロセスと、個人間で貸し借りするプロセスは、全く異なるのです。

このあたりは、簿記の基礎的な知識があれば理解できるのですが、簿記は商業科の高校で習う以外はあまり勉強する機会がないのではないでしょうか。普通科の高校から大学に進学すると、勉強する機会がなく、理解していない人が多いので、「国債は国の借金」と思い込んでいる人が多いと思います。
私もそうでした。大人になるまで勉強する機会がなかったので、ずっと「国の借金」と信じていました。でもいまは違うと説明できます。

なので、どうにかしてほかの皆さんにもこのことをお伝えしたいと思うのですが、誰に説明してもうまく伝わらず。。。

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